2-2.アガロース電気泳動
◆PCR反応溶液◆
1) アガロースを三角フラスコに入れて、TAE bufferを用いて溶解する[1]。
2) アガロース溶液(全部溶けてなくてOK)を電子レンジで加熱する[2]。
3) 電気泳動機器を組み立てて、アクリル板(ゴムテープでゲル溜まりを作ったもの)にアガロースゲルを流し込む[3]。
4) アガロースゲルが固まったのを確認して、電気泳動槽に移し、希釈した1×TAE bufferをなみなみと注ぐ[4]。
5) PCR産物から30 µLを取って、ローディング bufferと混ぜる[5]。それと分子量マーカー、ローディング bufferをウェルごとに入れる。
6) 90 V、50 mAの電圧をかける[6]。
7) DNAローディングbufferが、プラス端より1 cmのところに来たら泳動を終了する。
8) ゲルを取り出して、エチジウムブロマイドに15分~30分浸す[7]。
9) TBEも×10の状態で保存されており、使う前にMilli-Q水で希釈する(TAEと同じ)[8]。
10) 透析膜の準備:ビーカーにTAEを入れる。透析膜[9]を入れて、レンジで煮沸する。沸騰し始めたら取り出して、作っておいた1×TBEに浸し、30分~40分放置する[10]。
注釈
[1] TAE bufferは×10倍の状態で保管されるので、使う前にMilli-Q水で10倍希釈する必要がある(×10 TAEを10 mL取り、Milli-Q水で100 mLまでメスアップする)。ゲルの濃度は、100 mLのTAE bufferあたりのアガロースの重量(g)をパーセントで表す(g/100 mL)。アガロースの濃度は観察したいDNAサイズによって変える必要がある。一般的に、1~5 kbpのような大きいDNAの場合、ゲル濃度を0.7%にする。一方、300~600 bpのような小さいDNAの場合、ゲル濃度を2%にする。また、濃度検定の時は、これらの中間値(1.3%ぐらい)で測定するとよい。
[2] レンジでの加熱は、ゲルに小さな泡が出なくなるまで、沸騰させる。また、作ったゲルは、常温で1週間程度保存できるが、必ずラップなどで蓋をする(埃などの混入や水の蒸発の防止のため)。
[3] アクリル板をゴムテープでふさぐときは、下に隙間ができないように注意する。また、コームは、アクリル板の底から1 mmぐらい、奥のゴムテープから1 cmぐらいから離れたところに、平行に装着する(斜めに装着してしまうと、サンプルも斜めに流れてしまう)。また、コームは、「幅の狭い複数のウェルを開けるもの」と、「幅の広い1つのウェルを開けるもの」がある。自分が使うサンプル量に応じて適切な広さのウェルを作る。例えば、PCR後のアガロース電気泳動は、サンプルを多めに流すため、幅の広いウェルが1つのものを用いる。
[4] TAE bufferは必ずゲル全体を浸すような量を入れる。また、アクリル板と泳動槽の間に空気が残らないように、TAE bufferを入れた後、アクリル板を軽く持ち上げてまた落とす。
[5] サンプルの取り出す方法:まず、PCR処理後のサンプルからミネラルオイルを取らないように、水層だけを30 µL取る。これを新しいサンプリングチューブに移す。残った溶液をパラフィルム上に移し、油が吸着されたら、また先のサンプリングチューブに移す。サンプルとローディング bufferは基本3:1で調製する(サンプルが30 µLに対して、ローディング bufferが10 µL)。調製したサンプルを、ボルテックスで振とうし、遠心機で処理する。また、ローディング bufferは、キシレンシアノールとBPBが混ぜたものである。キシレンシアノールは分子量が小さいDNAと一緒に移動し、BPBは分子量の大きいDNAと同じ移動度を持つ。
[6] 電極はサンプルの側がマイナスである。DNAは負の電荷をするため、プラスに向いて移動する。電源入れる前に、必ずゲルの向きが正しいかをチェックする。
[7] エチジウムブロマイドは発がん性があるため、取り扱うと時は必ず手袋を着用する。また、使用する前に、エチジウムブロマイド液の底にたまっている赤いモヤモヤを混ぜる。
[8] この時、後のリンス用に1×TBE bufferを800 µLほどサンプリングチューブにとっておく。
[9] 透析膜の長さは、抽出するゲルの幅に応じる。基本入れる角型ケースの辺より少し長くする(だいたいは6 cmぐらい)。また、島本研で使う透析膜は、透析分子量が14,000 Da以下で、孔径が50 Å以下である。
[10] TAEはTBEより良い分離能を持つので、電気泳動の時はTAEを用いる。TBEは、TAEより速く分離するので、透析の時TBAを用いる。ただし、TBEは糖と複合体を形成するので、日持ちしない。
2022年卒 Yan Xi 記