研究分野

(1)生命体を構成する物質の性質やその作動原理(2)生命体をとりまく環境と生体応答システム(3)医薬応用の観点から考える生命科学、これら3つを柱とした研究体制となっており、教員が先端科学技術を駆使して研究を行っています。
生命科学科の研究は、いずれも人類のよりよい未来のための”ヒト”に関わる研究です。

詳細は各教員のページを参照して下さい。

(1)生命体を構成する物質の性質やその作動原理

タンパク質は、生命現象の根幹を担う生体高分子です。たった20種類程度のアミノ酸が様々な配列で並ぶことで、多様な構造・機能を持ちます。そして、様々なタンパク質や生体分子が出逢い、影響し合うことでさらに複雑な事象を引き起こし、わたしたちという生命が成り立っています。生命を理解するためには、複雑に絡み合ったタンパク質の機能を一つ一つ紐解いていくことが不可欠なのです。
多くのタンパク質は、普通の顕微鏡では見ることもできないくらい小さい分子ですが、物理化学的手法でその立体構造を可視化することができます。その立体構造情報は、酵素反応などの有用な機能がどのような仕組みで発揮されているのかを教えてくれます。また、それらの情報を基に、遺伝子組換え技術でタンパク質を改変し、新たな特性を持たせる試みもなされています。

図|構造情報を利用したタンパク質の機能解明:睡眠物質合成酵素の立体構造を決定し、その基質との結合の様子を調べた。その構造情報から、酵素の機能発現のメカニズムが見えてくる。さらに、酵素のどこに基質が結合しているか分かれば、そこに競合的に結合する酵素阻害剤(薬剤候補)を設計するのに役立つ。

(2)生命体をとりまく環境と生体応答システム

空気中には膨大未知な微生物が漂っており、バイオエアロゾルと呼ばれています。バイオエロゾルには、屋内の空気中を数メートル移動するに留まる微生物や、⻩砂や煙霧にのって数千キロメートルの⻑距離を風送される微生物も含まれます。そのため、バイオエアロゾルの影響も、ヒト体内に取り込まれアレルギーや気管支炎を誘発する、醗酵食分化の伝播にかかわる、雲をつくる核として働き気候変化にも関わるなど多岐にわたります。そのため、分子生物学的手法や顕微鏡観察、分離培養法などを駆使して、バイオエアロゾルに含まれる微生物の生態学的特徴を調べ、その生体や環境への影響を調査しています。

細菌や真菌、ウィルスを含むバイオエアロゾルは、⻩砂煙霧によって東アジア一円を拡散し、沈着地の健康・生態に影響を及ぼす。

(3)医薬応用の観点から考える生命科学

高速シークエンサー(次世代シーケンサー)の発展により、ゲノムDNAの塩基配列のみならず、生体中のRNA情報や分子間相互作用情報、細胞表面の抗体情報など、様々な生体情報が定量化されるようになっています。このような状況を背景として、生体由来データを使った研究:「生物データサイエンス」は、よりその存在感を増しています。様々な疾患の高感度マーカーとなるRNAスプライシング現象の探索や、疾患発症に関与するRNA代謝制御の解明、さらにはそれらの医薬応用を目指した研究も展開されています。

図| 生体や細胞に由来する様々な大規模データをコンピュータで解析して、生物学的な発見を目指す研究の概要
Iida K. et al. “Multilateral Bioinformatics Analyses Reveal the Function-Oriented Target Specificities and Recognition of the RNA-Binding Protein SFPQ.” 2020 iScience.
より。一部改変